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去人たち 完全版U
制作 K2C
ジャンル ノベル / サイコ / 学園
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サイコな雰囲気のノベルゲーム。プレイ時間は13時間ほど。
98年から長い年月をかけて制作されてきたゲームです。
人を選ぶ作風ですが重厚な世界観に引き込まれる良作。
今回はC72で買った完全版Uではなく、ネット上にアップされている完全版Tのレビューとなります。

独自の開発環境で作成。タイトル画面がスタイリッシュ。
選択肢はひとつだけ。でも一つのルートをクリアしたあとに「はじめから」を選ぶと別のルートがプレイできる場合があるので見逃さないように。
文字表示については一回のクリックで表示される文章が長すぎる時があるのが気になりました。
絵はちょいリアル調で味のある絵。話の内容にぴったりの絵柄です。
BGMは全部オリジナル。ノイズ気味の曲やオルタナ風の曲が耳に残る。良曲が多いです。特に「今、笑うとき」は涙腺を刺激する名曲。
ボイスもあるはずなんですが、ウチの環境ではなぜか再生されず。とはいえ無くても寂しく感じる事はありませんでした。

ストーリーは:誰もが入学したいと思う完璧な学校膨雀高校。膨雀高校が完璧で有り続けられているのには理由がある。
膨雀高校にはあらゆる醜聞、不祥事を揉み消し、隠蔽する「舎密部」と呼ばれる組織が存在する。
膨雀高校の3年生であると同時に舎密部警保局捜査2課課長でもある主人公はあらゆる事件の詳細を知ることなく事件を隠蔽するのが目的である。

事件の真実を「知る」のではなく、あくまで「隠蔽する」のが目的なのがユニーク。
翻弄する主人公の裏で動いている巨大な組織の正体が徐々に明らかになっていくのが面白い!

文体はかなり人を選びます。
心理学、哲学、社会学などの単語が当たり前のように使われるので非常に難解。
新事実が出てきても詳細に説明しようとはせず、なんとなく匂わせる形で提示していくので、自分なりに補完しながら読まなければ訳がわからなくなります。
「コレは読み飛ばしても難しいことを言っているという雰囲気だけ感じていれば大丈夫な部分だろう」と思っていたら重要な内容だったことが良くありました。
また文体の難しさ以前に、悟りの境地にいるキャラクター達の会話を100%理解するのは至難の業。
他にも基本設定が作中で語られない(プレイ前にHPの作品紹介を読むことを強く推薦)などある意味読み手を突き飛ばした書き方をしています。
しかし全編にわたって頭の固い話かといえばそうでもなく、とぼけた主人公の発言を中心とするコメディ面は面白いし、翠子は良い萌えキャラ。終盤のアリスも可愛い。
話の大筋は「なんとなく理解」のレベルでも大体はわかります。理解しきれないのにどんどん先を読みたくなる不思議な感覚。癖はあるけどハマったら抜け出せない個性的な文体です。

最初の2章は一見サスペンスのような展開をしますが実際はサイコなドラマ。物悲しい結末が印象に残ります。
3章以降はガラッと雰囲気が変わるので戸惑うかも。サイコ、アクション、SFにちょいセカイ系。今まで以上に突き放した展開が待っています。それでいてグイグイ読ませるパワーは圧巻。主人公と翠子が熱い!
カオスなこのゲームにふさわしい終わり方もグッド。美しさすら感じさせる締め。

プレイ中は「こいつらは何を言ってるんだ」と思いながらも、「この雰囲気にだまされていたい」と思いながらプレイしていました。結局、それなりの長さなのに最後までダレることなく一気に読むことが出来ました。
とにかく世界観の作り方、そして理解しきれなくても雰囲気だけ黙らせる文章のパワーがすごい。
オススメ! 最初の一章で雰囲気が肌に合わなかったらこのゲームは合っていないかも。逆に最初で「おっ」と思ったら最後まで楽しめると思います。
Netannad」やtacticsの名作「Moon.」が好きな人は気に入るかもしれません。

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